新しいカテゴリ「ヴォーカリーズ」を追加しました。「ヴォーカリーズ」とはボーカル化するという意味で言い換えると「器楽曲に歌詞をつけて歌う」という事になります。しかし、ジャズの世界では「アドリブに歌詞を付けて歌う」事をヴォーカリーズと呼んでいます。御存じの通りジャズはジャズメンが命を懸けて演奏するアドリブ(即興演奏)が命ですが、アドリブというのは即興的に作曲しながら演奏しているとも言えます。確かに名ジャズメンのアドリブは素晴らしいフレーズが多く、ジャズ喫茶のコーヒー一杯で粘りながら、アドリブを憶えた人も沢山いる筈です。処が、そのアドリブを愛するが故に歌詞を付けて歌ってしまおうという人が出てきました。勿論これが出来るのは電気吹込みによるレコードが自由に手に入るようになってからで、その始まりは戦後です。レコードを何回も聴いて採譜し、題名にあてはまる歌詞を付けます。処がアドリブは様々な楽器で演奏されますが当然歌う事は想定していません。よって早いフレーズが多く、音程も急激に変化し並の歌手ではとても歌えません。それを驚異的なテクニックで歌ってしまう人々が出てきたのですから大変な反響を呼びました。
このカテゴリ第1回はテナーサックスの”レスター・ヤング”が素晴らしいアドリブソロを聴かせてくれるカウントベイシー楽団の”Tickle Toe”です。レスター・ヤングはこのレコードが録音された1930年代後半から兵隊に行くまでが絶頂期で以後のサックス奏者のみならず、多くのジャズメンに影響を与えました。モダンジャズのルーツはレスターヤングと言ってもいいでしょう。
この曲をヴォーカリーズしたのはデイブ・ランバート、ジョン・ヘンドリックスとアニー・ロスの三人です。彼らは当時の最先端技術である多重録音を駆使し、ソロのみならずバンドのアンサンブルまでヴォーカリーズしたアルバム”Sing A Song Of Basie"を作り、大変な反響を呼びました。これを聞いたカウント・ベイシーはいたく感激し、彼らとの共演が実現しました。ボーカルには当時カウント・ベイシー楽団の専属だったジョー・ウィリアムスも参加しています。バックが本物のカウントベイシー楽団ですので是非、オリジナルとヴォーカリーズを聞き比べてみてください。彼らの驚異的なテクニックとカウント・ベイシー楽団のホットなアンサンブルが相俟って歴史に残る名アルバムとなりました。これも元はと言えば原曲の素晴らしさがあり、それが好きで好きでしょうがないという気持ちがこれだけのものを作らせたのでしょう。
アルバムタイトル:レスター・ヤングメモリアルアルバム
曲名:ティックル・トー(むず痒いつま先)
録音:1940.3.19(NY)
ソロ順:バディ・テイト(ts)→ハリー・エジソン(tp)→レスター・ヤング(ts)→カウント・ベイシー(p)
カウントベイシー楽団の弾むようなワクワクするようなアンサンブルから始まり、ハリー・エジソンのトランペットソロに続いてお目当てのレスター・ヤングのソロが始まります。スムーズでアイデアに富みある時ははっとするような素晴らしいソロです。ボリュームを上げて聞いて下さい。当時のレコードは78回転のSP盤で3分しか入りませんでした。逆にその3分に賭けた彼らの青春の瑞々しさが伝わって来るようです。

アルバムタイトル:シングアロングウィズベイシー
曲名:ティックル・トー(むず痒いつま先)
録音:1958
ソロ順:ジョン・ヘンドリックス(ts)→アニー・ロス(tp)→ジョン・ヘンドリックス(ts)→カウント・ベイシー(p)
このアルバムに参加したデイブ・ランバート、ジョン・ヘンドリックスとアニー・ロスの3人はこのアルバムの成功に気をよくし、三人でランバート・ヘンドリックス&ロス(LH & R)というグループを結成し大活躍しておりましたが、アニー・ロスが一時体調を崩しヨランダ・ベバンと交代しました。彼女は今でも元気に歌っておられます。
このカテゴリーは少々オタク入ってますが、こんな事やる人は他には居ないので、初めての方も、これを機会にヴォーカリーズの楽しさを体感してください。手元にネタが少ないので、蒐集しながら非定期にアップしていく予定です。