2008年04月12日

●蒟蒻問答/六代目三遊亭圓生

芭蕉翁という方が、或る年越前の永平寺へお参りを致しました。その、若いお坊さんが五、六人固まって何か無駄っ話をしている。中で一人芭蕉を見知った者が、おいおいおい、ご覧、ご覧、あそこに来たあの男が今有名な、俳句ではえらいと言う芭蕉という男だ。どれ、あれかい、うーむ、あいつは馬鹿だなあ、馬鹿だ。何が?何がといって仏に対して礼もしない。芭蕉という奴は無礼千万の馬鹿野郎だ。

大きな声で話をしていたのが耳に入いりましたものか翁がこちらを静かに振り返って
「仏とは極楽道の案山子かな」
並み居る坊さんがびっくりいたしまして中で一人芭蕉のそばに進み出でて
「あなたはなぜ仏を案山子とはののしられるか?」

扇面をとりだして(勢いよく扇子を開く)
「開けば三覚これ三界、つぼめば一本これ一遍、涼風を忘れたもうないつまでも」 
煽がれた時には二の句が注げませんで、
「あなたはそれほど悟りを開いていながらなぜ正僧になられんのか?」

翁にっことわらって
「夷狄をはなれて禽獣に及ぶ。古池や蛙飛び込む水の音」
と言いながら飄然と去ったと言いますが、
なんのこってすか、私にはちっとも分かりませんで、こういう事をやってみろてんで教わっただけのことで、何かちんぷんかんぷんでございますが、、、(場内爆笑)

これは三遊亭圓生の小噺で蒟蒻問答のまくらの一部です。始めて聞いた時はヤラレタッと思い、笑いが止まりませんでした。読んだだけでは雰囲気が伝わらないかもしれませんが、圓生の難しそうな語り口に引き込まれ、つい騙されてしまったという訳です。まあ、こういう事をやらしたら圓生の右に出るものはないでしょう。また、こういう与太話を作る人も誰だかは分かりませんが、たいしたもんですね。尚、聞き書きですので、漢字は間違ってるかも知れません。