●松山鏡/桂文楽
松山鏡は松山村という鏡の無い村で起きた椿事がネタになっていますが、桂文楽はその噺に入る前に鏡の無い国の小噺を枕として入れています。
ある鏡の無い国の連中が団体を作りまして江戸見物。浅草の観音様へお参りをしよう。蔵前通りにかかって参りまして大きな鏡屋さんがあったそうで、ちょっくら待てよ、おかしげな商売があるぞ、みろよ、かかみせ、かかみみせ、かかみせや、かか見せるのかな。
おせいどんよ、なんだねあれあれ、あれま、これはたまげたぞ、われ見せとるぞ、えれい商売があるもんだ、てんで大変に感心を致しまして村に帰りまして、これがえらい評判でございます。
権佐衛門さん、なんだな、来年江戸見物に俺も一緒につれていってくんろ、うん、あのかか見せるところ頼むぞ。うん。来年になりますとまたぞろぞろぞろぞろと江戸見物、蔵前通りにかかってまいりました。
丁度鏡屋さんが引越してしまって、後に琴や三味線のお師匠さんの家と変りまして、どこだい、そのかか見せるていうところは何のおらがなあ、この辺と、引っ越した後をみると、これはいがねぇ、これは駄目だ、こりゃ。来年でなきゃ見られんぞ。そうか、ここに書いてある「ことしゃみせん」としてある。来年でなきゃや見られんぞ、そうかな、おらのかかあ、あんべえ悪いだが来年までもつかな?心配ぶたねぇもんだ。そばに「しなんじょ」としてある。
鏡屋の看板「かかみみせ」を「かかみせや」と読んで、かかあを見せて売る所だと、妄想を逞しくした田舎者の勘違いが「ことしゃみせん」に繋がって、なかなか良く出来た小噺です。