●掛取萬歳/三遊亭圓生
江戸の昔は大晦日というと掛取りが江戸じゅうを朝まで駆け回ったそうで、そんな風景を読み込んだ落語が色々あります。この掛取万歳は主人公の八五郎が狂歌好きの家主、喧嘩好きの魚屋の金さん、義太夫好きの大阪屋の旦那、芝居好きの酒屋の番頭、萬歳好き三河屋の旦那にそれぞれの好きなもので追い返すという面白い趣向で、何度でも笑えます。ここではこの噺に出てくる狂歌をピックアップしてみましょう。まず
「春浮気夏は元気で秋ふさぎ冬は陰気で暮れはまごつき」
三遊亭圓生師によれば式亭三馬が
「春椿夏は榎で秋楸冬は梓で暮れは柊」
をもじった作だそうです。
「味噌漉しの底にたまりし大晦日超すに超されず超されずに超す」
"超すに超されず超されずに超す"が上手いです。どうしたって時限が来れば元旦になるんだと。
「大晦日内儀傷寒だとおどし」
"傷寒"は今で言うコレラです。
「大晦日首でも取ってくる気なり」
「大晦日首でよければやる気なり」
掛けを取る方も威勢がいいが、取られる方はもっと肝が据わってます。
「なにもかもありたけ質に置炬燵かかろう縞の布団だになし」
"置炬燵"、"縞の布団"がうまくかかってます。
「貧乏の棒も次第に長くなり振り回されぬ年の暮れかな」
貧"棒"も延びきって手におえません。
「貧乏をしても下谷の長者町上野の鐘のうなるのを聞く」
江戸っ子のやせ我慢でしょうか。
「貧乏をすれどこの家に風情あり質の流れに借金の山」
これが一番笑えました。山水だな、とは家主の弁。
「貸しはやる借りは取らるる世の中になにとて大家つれなかるらん」
家主の作です。八五郎の作に感心して、帰ってしまいました。
この話は誰の作かは分かりませんが、面白い狂歌が並んでいて楽しめます。家主の後も喧嘩、義太夫、芝居、萬歳とバラエティにとんで飽きさせません。しかし今では最後までやる人は居ないようです。