●パイレーツ・ロック
「パイレーツ・ロック」(原題:
The Boat That Rocked)という映画を見てきました。時代は1966年。この頃英国ではラジオ放送は国営放送であるBBCの2波しかなく、(NHK第1、第2という感じです)まだ民放はありませんでした。当時は既にロック全盛で色々なロックの名曲が出て来た頃です。ところが英国では電波法でロックのレコードを放送できる時間を制限していました。映画の冒頭に1日45分との説明があります。これは正確に言うと当時未だ英国の演奏家組合の「放送でレコードをかけると仕事が奪われる」という主張に則りレコードを掛ける時間を制限し、その他はBBCのスタジオから生演奏を放送していました。時々BBCライブという音源が出てくるのはこのためです。この様な状況では最新のロックを聞いて、踊りたい英国の若者の不満は募るばかりです。そこで英国の法律が適用されない公海に船を浮かべ、船に建てたアンテナから英国本土に24時間ロックを流し続けたのがこの"Radio London"という海賊放送局でした。(映画では"Radio Rock"になっています。)
映画では海賊船からの放送の様子と船内の乱痴気騒ぎがコミカルに描かれています。この海賊放送に英国政府は手を焼き、1967年9月に法律で海賊放送を禁止しました。放送に関わった者は勿論コマーシャルを依頼した企業も罰せられる事になり、さすがの海賊放送も停止せざるを得ない事態となりました。
この放送をリアル・タイムで聞いていたピーター・バラカン氏によれば最後の放送日はラジオの周りに若者が集まり、文字通り泣きながら聞いていたようです。その日はビーチボーイズの"Heroes And Villains"「正義と悪漢」が何度も掛ったんですが、要するに正義がRadio Londonで悪漢が英国政府という訳です。
映画では後半タイタニック紛いのパニック騒動になりますが、これは事実ではありません。海賊放送が禁止された後、海賊船で活躍したDJはBBCに雇われてDJを続けた人もいるようです。当然ではありますが、当時のロックが次々と聞けて懐かしい感触に浸れたのは良かったのですが、67年に終わった筈なのに68年の曲が掛ったのは一寸違和感を感じました。見る前はドキュメンタリー風かなと思っていたんですが、実際は明るいコミカルな映画で、海賊放送に手を焼く英国政府にも笑えました。予想とは違いましたが、非常に楽しめた音楽映画でした。